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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
十四
藪から棒に土足を突込みやがって、人、人の裾を引張るなんて、土、土足でよ、足、足ですよ、失礼じゃねえか、何、何だな、誰、誰だな。」
障子の外で中音に、
「放火よ。」
「や!」
十四
蒼くなって、咽喉で、ムウと呼吸を詰め、
「愛吉さんか、まあ、お入んなさい、煙草があります。」
うろうろす目が坐らず、
「おかみさんもお在でなさらあ、お入んなさい。」
「うンや、こう、お友達、お有難うよ。汝にすっかり棚おろしをされちまっちゃ、江戸中は構わねえが、こちら様ばかしゃ、面が出せねえ、やい。
出ろ、こん畜生。
出ろ!」
というと、ぐいと引くのと同時であった。足の指に力はないが、気に打たれたか、ひょいと腰、ひょろり板の間の縁が放れて、腰障子へふッと附着く。
途端に、猿臂がぬッくと出て、腕でむずと鷲掴み、すらりと開けたが片手業、疾いこと! ぴっしゃりと閉ると、路地で泣声。
「御免なさい、御免なさい。」
というのが聞える。膝を立てて煙管をついて伸上った女房は、八ツ下りの日が明るく、あかり窓から、てらてらと自分の前垂にも射して、ほこりのない、静な勝手を見るばかり。
戸の外で二ツ三ツ、ばたばたと音がする。