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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

四十一

道芝の露の中で、ひどくさし込んで来たじゃないか。お頭を草原に摺りつけて、薄の根を両手に縋って、のッつ、そッつ、たってのお苦み。もう見る間にお顔の色が変ってね、鼻筋の通ったのばかり見えたんですよ。」

「ま、ま、待っとくんなせえ、待っとくんなせえ、」

愛吉聞くうちにきょろきょろして、得もいわれぬ面色しながら、やがて二階を瞻めた。

「待ちねえ。おかみさん、活きてるね、大丈夫、二階に居るね。」

「お前さん、おいでなさいよ。先刻からお上りなさいッて、おっしゃってじゃありませんか。旦那が御一緒じゃ厭なんですか。」

「そこどころじゃねえ、フウそうして、」

「あとで聞いたら何だとさ、途中の都合やら、何やかやで、まだその時お午飯さえあがらなかった、お弱い身体に、それだもの、夜露に冷えて堪るものかね。」

「なぜ、そんな時、大きな声で、一口愛吉って呼ばねえんだなあ、大島に居たって聞えらあ。」

怨めしそうなが真である。

四十一

「もっともね、日の暮れない内から、長い間そこに倒れたようになっておいでなすったんだってね、何だとさ。

晩方、あの坂を、しょんぼりして、とぼとぼ下りておいでなさると、背後からお前さん、道の幅一杯になって、二頭立の馬車が来たろうではないか。