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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
三十三
成程おばさんが居ますからな筈でがした。……自分は居なくなる積りだから。
(それでは、)
(さようなら、)
と挨拶をして、もう一度梢を視めなりに、ずッと向うへ、紅葉の下を、うしろ姿になりましてな。それっきり見返りもしなかったが、オヒャ、ヒュウイ、ヒヒャ、ユウリというのが、いつまでも私、耳の底に残るんで。独で見送っていると、大浪の裾がどこまでも畝った形の、低くなった方へ遠ざかって行くのが、何となく暮方で、影が薄い。
ト緋色の雲の、隧道の入口、突当りに通天門とある。あすこのもみじは、実際、そこからが自慢なんですが、足も停めず、視めもせず、アーチ形に中の透く、燃え立つ炎のような中へ、消え失せた体に入ってしまった。
気になる。
私、すぐあとから駆出して、」
三十三
「件の通天門を入ると、赫と明く、不残真紅。両方から路をせばめて頬がほてるようだが、それは構わん。
お夏さんは、と見るとこの一条路、大分長いのにもう見えず。きょろきょろ四辺をしたが、まさか消え失せたのじゃあるまい、と直ぐに突切ってぐるりと廻ると、裏木戸に早や山茶花が咲いていて、そこを境に巣鴨の卯之吉が庭になりまさ。