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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

二十八

同一色にコスモスは、庭に今盛だし、四季咲の黄薔薇はちょいと覗いてももうそこらの垣根には咲いている、とメトロポリタンホテルは近し、耳馴れぬ洋犬は吠えるし、汽笛は鳴るし、白い前垂した廚女がキャベツ菜の籠を抱えて、背戸を歩行くのは見えるし……」

刻下、口を衝いて数百言、竹永は我が探訪の職に対し、生殺与奪の権を握れる、はたかれ神聖なる記者として、その意見に服し、その説に聴くこと十余年。いまだこの日のごときを知らなかった。三面艶書の記者の言、何ぞ、それしかく詩調を帯びて来れるや。

惘然として耳を傾くれば、金之助はその筋疼む、左の二の腕を撫でつついった。

「これ実に侮るべからざるハイカラですよ。」

二十八

「竹永さん、金之助病のためにこの境に処して、なお巴里、伊太利の歌に魂を奪われず。却って佃島の(鰯こ)に心を澄まし、初冬の朝の鰹にも我が朝の意気の壮なるを知って、窓の入口に河岸へ着いた帆柱の影を見ながら、この蒼空の雲を真帆、片帆、電燈の月も明石ヶ浦、どんなもんだ唐人、と太平楽で煩っていたのも、密に柳屋のお夏を健在、と思っての事であった。」

いいかけて寂しく笑った、要するに記者の凡ての言は、お夏に対する狂熱の勃発したものであったのである。