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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

十二

はてな、」と沈んで目を閉じる。

「へい、気になりますかね、何ぞ……」

「どうもね。心配なのさ、こうやってお前、私がおもりをしている方はね、妙に火に祟られていなさるのさ、いえね、丙午の年でも何でもおあんなさりやしないけれど、私が心でそう思うの、二度までも焼け出されておいでなさるんだからね、」

「どこで、へい?」

「一度は、深川さ、私たちも風説に聞いて知っているが、木場一番といわれた御身代がそれで分散をなすったような、丸焼。

二度目が日本橋の人形町で、柳屋といってね、……」

十二

「もうその時分は、大旦那がお亡くなんなすったあとで、御新姐さんと今のお嬢さんとお二人、小体に絵草紙屋をしておいでなすった。そこでもお前火災にお逢いなすったんだろうじゃないか。

もっともその時の火事は、お宅からじゃなくって、貰い火でおあんなすったそうだけれど、ついお向うの気の違った婆さんの許から、夜の十二時というのに燃え出すと、直ぐにお店へあおりつけたもんだから、それという間もなし、それにお前さん、御新姐は煩っていらしったそうだし、お生命に別条がなかっただけで、お嬢さんも身体ばかり、跣足でお遁げなすったそうなんだよ。