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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

九

(阿魔、やい、注いでくりゃ。)

と前はだけの平胡坐、ぬいと腕まくりで突出したのが飯喰茶碗。

五合を三杯半に平げると、

(こう、向うへ行って、取って来い、)

は乱暴じゃありませんか。

打たれそうだから、おどおどして、白鳥を持って立ちにゃ立ったが、極りの悪そうに、うつむいた、腰のあたりを、ドンと蹴上げたから堪りませんや。」

九

「(あれ)といってどたり横倒れになって、わッと袂を噛んで泣くと、

(三日辛抱が出来るかい、べらぼうめ、帰れ、)

とばかりで、蹴つけた脚を投出したまんま、仰向けにふんぞり返って、ええ、鼾。

その筈で、愛の奴だって、まさか焼跡の芥溜から湧いて出た蚰蜒じゃありません。十月腹を貸した母親がありましてね。こりゃ何ですって、佃島の弁天様の鳥居前に一人で葦簀張を出しているんですって。

冬枯れの寒さ中毒で、茶釜の下に島の朝煙の立たない時があっても、まるで寄ッつかず、不幸な奴ッちゃねえけれど、それでも、

(大島の磯へ出て、日本の船を見い見いした時にゃ、おっかあ、お前を思い出した、)

と今度店を持った折に、一所になろうッていったそうですが、どうして肯入れるもんですか、子を見ること何とかというわけで、三日酒のまず、喧嘩をしないでいたら、世話になろうといいましたとさ。