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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
六
当節は不景気ですから、いくらも床店の売もの、貸家はあるにゃありますが、値が張ったり、床屋に貸しておくほどの差配人、奴の身上を知っていて断ったりで、とうとう山の手へお鉢をまわすと、近所迷惑。あいにくとまたこの音羽続きの桜木町に一軒明いたばかりのがあったんでさ。
そこへ談を極めましてね、夏のこッたし、わけはありません。仕事着一枚の素裸。七輪もなしに所帯を持って、上げた看板がどうでしょう、人を馬鹿にしやがって!――狐床。」
六
「その狐が配ったんでさ。あとで蚯蚓にならなかったまでも、隣近所、奴が引越蕎麦を喰った徒は、皆腹形を悪くしたろうではありませんか。
開業の日から横町大騒ぎになりました。というは、何です、まあ、口あけのお客と、あとを二人ばかり仕事をしたッていいますが、すぐに祝酒だ、とぬかしゃあがって。店をあけたまま、見通しの六畳一間で、裏長屋の総井戸をその鍋釜一ツかけない乾いた台所から見晴しながら、箒を畳へ横ッ倒しにしたまんま掃除もしないで、火の玉小僧め、表角の上州屋から三升と提込んでね、おかみさん、突当りの濁酒屋から、酢章魚のこみを、大皿で引いて来てね、