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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
十一
悪たれ店子の上に店賃は取れず、瘠せた蟒でも地内に飼って置くようなもんですから、もう疾くにも追出しそうなものを、変った爺で、新造が惚るようじゃ見処があるなんてね、薬鑵をさましていたそうですが、御覧なさい。愛吉が弥次馬に水を浴びせている内に、長屋中では火を消して、天井へもつかないで納まったにゃ納まりましたが、その晩の為体には怖毛を震って、さて立退いて貰いましょ、御近所の前もある、と店立ての談判にかかりますとね、引越賃でもゆする気か、酢のこんにゃくので動きませんや。」
十一
「じゃ仕方がない。こういうこともあろうためだ、路は遠し、大儀ながら店請の方へ掛け合おうと、差配さん、ぱっちの裾をからげにかかると、愛の奴のうろたえさ加減ッたらなかったそうで。
その店請というのは、何ですよ。兜町の裏にまだ犬の屎があろうという横町の貧乏床で、稲荷の紋三郎てッて、これがね、仕事をなまけるのと、飲むことを教えた愛吉の親方でさ。
だから狐床ッてくらいなんで。鯨に鯱、末社に稲荷。これに逢っちゃ叶いません。その癖奴が、どんな乱暴を働いたって、仲間うちから、いくら尻を持って行っても、うけはしないんですがね。