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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
二十一
「御、御串戯おっしゃらあ。」
「どれ、急いで行って参りましょう。」
と女房は、半纏の襟を扱いて立ち、台所へ出ようとして、少々気がかり、
「貴女え、」
「ああ、」
「先生がいらっしゃらなくッて、寂しい、寂しい、とおっしゃりながら、お憎らしい。あとで私が言附けますよ。」
「ああ、可いとも、ねえ、愛吉、姫様がついている人なんか、ねえ。」
いささかもその意を解せず、偏に膝を揺って、
「御、御、御串戯おっしゃらあ。」
「ちょいと、愛吉さん、」
と女房優しく呼びかけ、
「よく、おもりをして下さいよ。お泣かせ申さないように、可ござんすかい。お前さん、また酒と間違えて飲んじまっちゃ不可ませんよ。」
「御、御、御、御串戯おっしゃらあ。」
勝手の戸がかたりとしまると、お夏ははらりと袂を畳へ、高髷を衝と低く座を崩して姿を横に、縋るがごとく摺り寄って、
「どうしたの、お前、」
とて、膝につむりを載せないばかり。
愛吉しゃッきりと堅くなって、居丈高。腕を突揃えて、畏まって、
「しばらくでえ、」
「愛吉や。」
「お嬢さん………」
二十一
「まあ、お前どこに居たんだねえ。」
「え、私は何、そこらの芥溜に居たんですがね。