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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
二十七
金之助は扉に並べて一枚を敷いた、畳の隅、鉄の火鉢の方に目を遣って、
「編物をしていた附添のね、福崎(看護婦)というのに、(どうしたの)ッて聞くと、何も間い返すまでもない。
(苦しいんですよ、)といいます。
(不良いのかね。)
(いらしった時から釣台でしたから、)
それさえその時まで私は気がつかないで居たくらいで。もっとも前晩、夜更けてからちと廊下に入組んだ跫音がしましたっけ。こうやって時候が可いから、寂寞して入院患者は少いけれども、人の出入は多いんですから、知らなかったんです。」
「まさか自分の病院で、治療するというわけにも行かなかったものでありましょう。」
「ははあ、秘密のようですかい。」
二十七
「だから私もその、事件の場所へ立会った程な、この度のことに就いては浅からん縁がありますけれども、実は遠慮をして差控えていたのでがす。しかし、経過が、どうか。容体が、どうか。気になって、どうも心配でなりません、ところが、幸い、」
といいかけて、兀天窓を、はッと圧え、
「貴下の御病気を幸いといっては恐縮千万、はははは、」と、四辺を憚った内証笑。
「実は私も自分で幸いと思っている。