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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
七
月夜烏もそれかと聞く、時鳥の名に立って、音羽九町の納涼台は、星を論ずるに遑あらず。関口からそれて飛ぶ蛍を追ざまに垣根に忍んで、おれを吸った藪ッ蚊が、あなたの蚊帳へとまった、と二の腕へ赤い毛糸を今でも結えているこの若い衆、願くはそのおかえりを、半日ここで待つ気である。
七
ここにおいてか、いよいよ熱心。
「でもその、拳ぐらいで騒ぎが静まりゃ可いんですが、酔が廻ると火の玉め、どうだ一番相撲を取るか、と瘠ッぽちじゃありますがね、狂水が総身へ廻ると、小力が出ますんで、いきなりその箒の柄を蹴飛ばして、血眼で仕切ったでしょう。
可かろう、で、鍍金の奴が腕まくりをして、ト睨み合うと、こけ勘が渋団扇を屹とさして、見合って、見合ってなんて遣ったんですって。
表も裏も黒山のような人だかりだろうじゃありませんか。
晴の勝負でさ。じりじりと寄合って呼吸が揃ったから颯と引くと、ハッケもノコッタもあったもんですか。
火の玉め、鍍金の方が年紀上で、私あ仏の銀次だなんて、はじめッから挨拶が癪に障ったもんだから、かねてそのつもりだったと見えまさ。
喧嘩には馴れてますから素敏い。立つか立たないに、ぴしゃぴしゃと、平掌で銀の横ッ面を引叩いた、その手が火柱のようだから堪りません。