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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そのことは、君にもちょっと話したと思うが」
「だからよ。君が行けば一も二もなく匿ってくれよう。さあ行き給え。あとはおれがひきうけた」
「だが、老母の身が」
「いや心配するな。県城を立つときからおれは腹をきめていたので、確かな者に、君のおふくろの身を頼み、すでに先へ山東の旅へ立たせてある。ここから急げば、きっと途中で追いつくだろう。ああ、長いつきあいだったな雷横、達者でいてくれ」
「すまん! ……この恩は忘れぬぞ。では朱同」
「おお、銀はあるか」
「持っている、持っている。じゃあ、いつかまた」
友の情に涙しながら雷横は疎林を走ッてたちまち東へ姿を消した。
朱同はぶらんと居酒屋へ戻って来て、
「さあ大変だ。雷横に逃げられちまった。だがあわてるな。罪はおれ一身が着る。飲むだけ飲め。どうせこれから帰りは空身だ」
と、カラカラと打笑った。さてはと、部下は暗にさとっていたが、誰あって雷横に憎しみを抱いていた者はなく、またみな朱同の友情も知っていたので、黙々と彼のいうがままに元の道へもどって行った。
ただこの報告に釈然としきれなかったのは女の情人でもある新任の知事殿だった。