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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
名山大川の奥深くにいるかもしれぬが、戴宗の神行法で馳け探せば」
「なるほど、むなしくいるよりは」
「それに如くなしです。すぐ戴宗を呼びにやりましょう」
伝令をやると、その戴宗は、何事ならんと、すぐここの帷幕へやって来た。――そして呉用、宋江の二大将から托命の仔細をきくと、彼も、梁山泊軍三千の運命を担う一期の働きはいまだとして、勇躍、すぐ例の神速法の甲馬を脚に結い付けてここを出発した。
いや、彼にはもひとり付いて行った者がある。
例の黒旋風李逵である。――李逵などは無用な相棒、ヘマは仕出来しても、ろくな足しにはならぬと退けられたのだが――事件の起りは自分が殷直閣を殺したことにある。かたがた、柴進大人へのお詫びにもと李逵としてはいつにない神妙な哀願なのでついに連れて行くことになったのだった。
「だが李逵。断わっておくぞ」
「へ。何をで」
「きさまにも神行法を授けるが、わしが呪文をとなえると、たちまち身は雲を踏んで飛行する。呪を解かねば、止まるにも止まれんのだから、心得ておけよ」
「院長(戴のこと)そいつア困るよ。小便する間もなくっちゃ」
「そんなことはどうでもいい。