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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

ふと、ころがッている足もとの酒桶を、つくづくと見すえて、

「……はてさて、貴さまも空ッぽになってみるとつまらんやつだな。智深和尚の引導を、せめてこの世の冥加と思えや。喝ッ」

と、麓へ向って二つとも蹴放った。一個は空天に躍って森へ沈み、一個はすぐ下にいた牛の群れの中に落ちた。びっくりした牛が跳び別れて、やがて後から、のろまな啼き声が長く聞えた。智深は手をたたいてうち笑い、蹌々踉々、どろんこになって、ほどなく五台山へもどってきた。

「ちイ、このなめくじ野郎め、な、な、なんでこの魯智深を、通さんとぬかすのか」

「とんでもない仏弟子だ。こら智深、ここは山門だぞ、山門だぞよ」

「なアるほど、文殊院五台山の山門らしい」

「葷酒山門ニ入ルヲ許サズ。とそこにそんな大きな制札も立ってある。もし破戒飲酒の僧あらば、青竹で四十打ッ叩いて寺域追放の掟だぞ」

「おもしれえ。ちょうど按摩代りになる。おい番僧、いっちょうやってくれい」

ところへ、騒ぎを聞きつけて、監寺、提点、蔵主、浴主などの役僧などから、工事場の諸職まで、まっ黒になって様子を見にきた。たちまち門の番僧らと一つになって、

「やあ言語道断。