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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

――梁山泊軍三千は、怒濤をなして、はや城壁下に鼓噪していた。時に高廉は、一だんたかい将台にあって、

「おうっ、めずらしや、あれに賊の軍師呉用、賊の大将宋江、またそのわきに一清公孫勝が駒を並べて指揮している。――元輝、一軍をひッさげて、一清の首をねじ切ッて来い。怯むな! 高廉がこれにあって、法力の加勢をするぞ」

と、太阿ノ剣を抜き払い、眉間に当てて咒を唱えた。

するとたちまち、あたりは暗くなり、雲のごとき気流のうちから、数千の豼貅(大昔、中国で飼い馴らして戦場で使ったという猛獣のこと、豼は雄、貅は牝)が敵陣めがけて飛躍していった。――同時にそれに力を得、官軍の猛将薛元輝もまた、城の一門を押しひらかせ、金甲鉄鎗の光り燦々、奔流となって敵中へむかって吶喊して行った。

ところがである。

ほとんどの将士が城へ帰らなかった。薛元輝もむなしく討たれてしまったらしい。

それも道理、妖法が吹き放った豼貅は、梁山泊軍の上まで行くと、みなハラハラただの枯葉になったり紙キレになって、何の加勢にもならずに仕舞ったものである。つまり妖術競べにおいて、完全に、高廉が破れた証拠だ。