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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
破戒堕落の外道など、一歩も不浄者を入れることはならんぞ、水でも浴びせろ」
とばかり智深を拒んで、その大きな図ウ体を突きもどし、さらに山門前の石段へ突きころがした。
さあたまらない。「――やったな」と智深は四つン這いになって上を睨めあげた。一段一段、大象のようにゆっくり登ってくる。恐ろしさに役僧どもも職人もタジタジと後退さりした。智深はいよいよおもしろくなった。まるで彼の遊戯のお相手のために大勢そこへ出揃ってきたようなものだった。
「そうれっ。片っ端から摘ンで捨てるぞ」
躍り立つやいな、事実、彼の左右の腕、両の足から、さながら塵芥みたいに人間が刎ね飛んだ。――わあっと逃げるを追って、彼はなお、伽藍、堂院、いたるところで地震のような音響と悲鳴をまき起し、あげくのはて蔵殿の一室へ入ると、大の字なりに寝てしまった。その鼾たるやまた山谷を揺するがごときものであった。
それに呆れているどころか、後の始末やら物議こそまた一と揉めだった。番僧たちは、監寺、提点などを先に立てて、智真長老の座下へ迫った。
「かかる例は、わが文殊院五台山の開山以来ありますまい。霊域に魔獣を飼えとは釈尊の法にも聞きおぼえぬところ。