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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
あの人の安否を確かめろ」
宋江は厳命した。急務はそれだった。たたかいの目的はそれだったのだ。
しかし、柴進の安否は全然つかめなかった。城内の大牢雑牢、地下または高楼、監禁されていそうな箇所はおよそ隈なく捜査したが見あたらない。牢番獄卒どもは、逃げ散ッていたし、牢舎中の囚人七、八十人の首カセや鎖を解いてやって、これにも質したが知る者はない。
ただ三日目に、柴進の眷族十数人が、発見された。思いがけない林の中で、急造らしい板屋葺の監房に押しこめられていたのである。ここには番人どももまだ残っており、その中のひとり藺仁という老吏から端なくこんなことが聞かれた。
「……さよう。なにさま、思い当りがないでもございませぬ。……あれはもう七日も前、ここのお城もあぶないような噂でしてな、わしらもオロオロしている日のこと。お奉行の腹心がたが、大牢から引きずり出したとみえる一人の囚人をしょっ曳いて、林のおくの方へ入って行きましたのじゃ。ヤレヤレ斬られるのだナと、怖い物見たさで、そっと遠くから見ておりますると、その辺はひどく昼でも陰気な場所でしてな、きっと首を斬るのが不気味になったのかもしれません……その衆たちで何か囁いていたと思うと、近くにあった空井戸の中へ囚人を抛り込んで、そのまま立ち去ってしまいましたのじゃ。