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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「捕った。さいさきは吉いぞ。官軍の一将彭※(「王+己」、第4水準2-80-60)はいけどったぞっ」
ここでは万雷のような勝鬨が上がった。とりことした彭※(「王+己」、第4水準2-80-60)は、ただちに泊兵の手で後陣へ遠く送りこまれる。
ただし、勝ち色に色めいたのは、全く、ここではのことだった。ほかを見れば味方の影は惨としてどす黒い。鶴翼も車掛りの陣形もはやあったものではない。支離滅裂だ。官軍の精鋭らしい中軍は、深く泊兵の陣を裂いて割りこみ、あたりに敵なき猛威をふるいぬいている。
「ああ、これはいけない」
林冲も病尉遅も、おもわず嘆を発した。
「こっちの中軍にも、宋先生、呉軍師、そのほか、日頃の手だれもたくさんいるのに、まるで手込めにされているさまだ」
「どうしたことだ。この崩れは」
すると、先にとりこの彭を送って行った一丈青が、馬をとばして引っ返して来た。そしていうには。
「全軍、あとへ帰って中軍をかためてください。こう分散していれば、個々みなごろしになるおそれがあります。呉軍師の急命令です」
「軍師もやきが廻ったのか。いまさらここで陣替えとは」
「でも、まったく思いもよらぬ奇計が敵にあってはぜひもありません。