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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「えっ、ご存知なので」

「知らないでか。拙者も元は禁軍の一人だ。都にいた頃は、よく武を談じ、技を競べあったこともあり、たがいに畏敬していた友人だったが、さあ……あの正真正銘の鉤鎌ノ鎗の一人者を、どうしてここへ迎えうるかだ。そいつがちと、むずかしいて」

「いえ、よんどのことなら、ひとつここで無理な手をつかえば」

「……どんな手を?」と、ここで宋江がまた訊くと、湯隆がここでいうには。

「徐寧の家には、世に二つとない先祖伝来の宝があります。てまえも亡くなった父と東京見物に参ったさい、徐寧の家で見せて貰った薄ら覚えが残っていますが……なんでもそれは“鎗貫サズノ鎖小札ノ鎧”……とかいう物で、朱革ノ鎧櫃に入れ、いつも大事に、二階の天井裏に吊ッてある。つまり徐寧にとっちゃア命から二番目の宝。――どうでしょう。そいつを一つ巧くこっちの手に奪り上げて口説いてみたら」

「むむ! 一案だな」

呉用が大きく頷いた突嗟である。またも末座から剽軽な声で、「――ほいッ、御用とございますなら、あっしを忘れちゃいけませんぜ」と人を分けて、こう名のり出て来た者がある。

鼓上蚤の時遷だった。

「おう誰かと思えば、梁上ノ君子(泥棒の意味)か。