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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
なるほど、時遷ならお手の物だろう」
「はばかりながら――」と、時遷は鼻うごめかして。「忍びにかけてなら!」
「よしっ、きさま、ひきうけろ」
「のみ込みました。ところで軍師。ほかのお手筈は」
「いまそれぞれに役割を付けて申し渡す。――楊林、薛永、李雲、楽和、それと湯隆。そしてもう一名戴宗も。――ずっと揃ってここへ列んでくれい」
呉用がたちどころに授けた一計とはそもどんな策か。一人一役、各※(二の字点、1-2-22)の能に応じて割り振られ、ここに“宝盗み”の手だてと“徐寧抱き込み”の段どりはでき上がった。そして「物置のガラクタでも月日のうちには陽の目を見る」の譬えで、まずは先陣の蚤の時遷、日頃にも似ず張りきって、一ト足さきに山をおり、開封東京の空をさして立って行った。
屋根裏に躍る“牧渓猿”と、狩場野で色を失う徐寧のこと
城城下、花の都。冬ながら宋朝文化爛漫な千街万戸は、人の騒音と賑わいで、彩霞、煙るばかりであった。禁裡の森やら凌烱閣の瑠璃瓦は、八省四十八街のその遠方此方にのぞまれる。――で、この巷での一人の旅人時遷のごときは、一匹の蚤とも人目には映るまい。
――その日、旅籠を出た時遷は、城内の官庁街をうろついていたが、やがて太衛府の横をぐるっと歩いて来て、