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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

そしてふたたび、東京さしての旅また旅をかさねてゆくうち、はからずも、ここ瓦罐寺と呼ぶ奇峭怪峰の荒れ寺に、一夜の雨露を凌がんと立ち寄って、彼は、世にあるまじき人間のすがたを見た。

「はあて……。これが建立された時代は、天子の勅使、一山の僧衆、香煙、金襴、さぞ目ざましいものだったろうに。よくもこうまで、荒れ果てたものだ」

瓦罐寺の地内へ、一歩入った智深は、その荒涼たる景に、さしもの彼も、唖然とした。

鐘楼や堂宇は崩れ放題、本堂のうちも雀羅の巣らしい。覗いてみれば、観音像はツル草にからまれ、屋根には大穴があいている。そこらの足痕は、狐のか狸のか、鳥糞獣糞、すべて異界のものだった。

「おういっ。人間はいねえのか。だれか住んでる奴はいないのか」

すると奥のほうから骨と皮ばかりな老僧が、ひょろりと立ち現われて、

「おお……お旅僧か。ここには人をお泊めする糧もないぞよ。早う行かっしゃれ、行かっしゃれ」

「なに、糧もないと。あの庫裡で炊いている煙はなんだ。どうせ貴様たちの食物も里で貰ってきたお布施だろう。おれも腹が減っている。お斎にあずかりたいものだ」

「めっそうもない。