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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
伝単は北京に降り、蒲東一警部は、禁門に見出だされる事
「あぶねえ、あぶねえ」
燕は、あわててほかの部落へ行った。しかし、そこにも北京府の捕吏が来て屯していた。ぞっとして、彼は粟も求めずもとの巣へ逃げ戻ったが、これが足のツキ初めとは知るよしもなかったのである。
あいかわらず、鳥を射、川魚を採って、露命をつないでいたが、ある日の夕、小屋へ帰ってみると、盧俊儀の姿がみえない。あたりは狼藉、血しおまでこぼれている。さてはと仰天して、燕は夢中で追っかけた。けれど時すでに遅し。――盧は馬の背にくくられ、二百人からの土民や捕吏の手で麓へ引ッ立てられて行く途中だった。
「ちくしょうッ。ええ、どうしたら?」
しかし、どうすることも早やできない。彼は泣いた。天を恨んだ。断崖から谷へとびこんで死んでやろうか。死んでどうなる?
……ここに。夜の白々明けのこと。
范陽笠に、縞脚絆、腰に銀巻き作りの脇差という身がるな姿。
またもう一名は、古物だが、錦襴の腰帯に、おなじく大刀を帯し、麻沓の足もかろげに、どっちもまず、伊達な男ッ振りといえる旅の二人が、何か、笑い声を交わしながら峠を北へ降りかけて来た。
「オヤ。あれ見や兄哥。へんな野郎が、谷へむかって、泣いていやがるぜ」