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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

のみならずこの宣賛は、西蕃との混血児である。ヒゲは赤く、ちぢれ毛で、鍋底のような顔にまた念入りにも雄大なる獅子ッ鼻ときている。

かつては、或る西蕃王の邸にいて、郡馬(王の女婿)となったが、その黒い姫君すらも、彼を嫌って、振り抜いたとかで、自分からそこを追ン出てしまったため、以来、“醜郡馬”という名誉あるアダ名すら貰っている宣賛だった。――だから誰もその発言に本気で耳をかそうとしなかった。

しかし、蔡大臣は、宣賛の大真面目なところを買って、

「む! 言って見給え。君が推すその人物とは?」

と、傾聴すべき容子をみせた。

「はっ」と、宣賛は、直立不動のまま――

「目下、蒲東にいて、警部長の現職にある者ですが」

「なんだ、そんな下級の警吏か」

「はいっ。……ですが家系は古く、三国時代の後漢の名臣、関羽のただしい子孫にあたり、苗字を関、名を勝といい、よく兵書を読み、武技に長け、黙々と、田舎警部を勤めてはいますが、もし彼に地位と礼を与えるなら、きっと天下のお役に立つにちがいありません」

と、口を極めて、ほめたたえた。

これは“掘り出し物”かもしれない。蔡大臣はやや意をうごかした。