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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
いかに関勝の青龍刀たりといえ、これにはおよぶべくもない。もちろん、官軍方からも、
「わが関将軍を打たすな」
と、どっと助太刀には出て来たが、あわや、関勝あやうし、と見えた。
ところが、宋江は急に、鉦を打たせて、味方の猛者をひきとらせてしまった。さあ、彼の身辺は、不平、ごうごうである。中には、
「なんだって、かんじんなところで、いくさをお止めなされたのか。これでは、いくさにも何もなりはしない」
と、突っかかって来る者さえある。
宋江は、屹となって、たしなめた。
「諸君は相手を殺すのが勝ちだと思っているが、私は、人を生かすことをもって勝利としている。われわれの仲間は、世に忠義をむねとし、人に仁と義をもって接するのが、本来の約束ではなかったか。いわんや、関勝は忠臣の子孫、その先祖は神に祀られている者だ。もし彼に徳と智とまことの勇があるなら、宋江はいま預かっている統領の椅子を、彼に譲ってもよいとさえ思っているのだ」
打てば響く。――宋江にあったこの心は、関勝の胸にも何かを呼び起していたにちがいない。――彼はその夜の陣営で、ひとり密かに考えていた。
「はてなあ? 宋江というやつは解せん男だ。