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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――二人はこの戴宗と途中で出会った。そこで安先生ひとりだけは、戴宗の飛行の術に抱えられ、先に、山東の空へと翔けた。
水滸の泊では、人々、わんわんという出迎えである。それッとばかり、すぐ宋江のいる一閣の病室へ彼を通す。色街では海鼠のような安先生も、ひとたび重病人の生命に直面するや、さすが別人のように、どこか名医の風がある。
「なるほど、あぶないところだったな。しかし、手おくれではない」
診断がすむと安先生、委せておいてくれといわぬばかりな態である。その自信ぶりを見て一同ホッと安堵の胸をなでおろした。
吸出し膏ともいうべき物か。まっ黒な練薬の貼布。爪の先みたいな医刀による手術、灸治の法、強壮剤らしい煎薬などで、宋江の容体は、みるみる快くなり、二十日もたつと、元の体になりかけていた。
この間に、張順も、王定六とじいさんを連れて帰山し、泊中は、一時に雪も氷も解けてきた観がある。
事実、冬もすでに終りに近い。かつは体も本復してみると、宋江はまた、北京の空に思いを馳せ、
「――ああ、獄中の盧俊儀、石秀は如何にせしぞ。二人の身こそ案じられる」
と、ついに呉用に胸を語って、自身、再度の出陣を言いはじめた。