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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

……ところでひとつおっかさんにも、よろこんでいただけることがあるんですが」

「なんなのさ、いってごらんよ」

「その千万長者が、たった一度でよい、そしてなにも、泊めてもらわなくてもいいから、李師々大夫と話がしたいというんです。ちょっと手土産がわりという纏頭でも、百両千両はきれいにお撒きになるお大尽。おっかさん、どうでしょう?」

欲には目もないのが廓の慣わし。わけてここのご内緒ときては、強欲の名が高い。おかみはさっそく、李師々をよんで、燕青にひきあわせ、李師々はまた、品よくおかみのはなしを聞き終って、

「お話し相手でよいことなら、いつでもお渡りくださいませ」

と、いう返辞。ではさっそくと、燕青はすぐ走り戻って、向いのお茶屋から宋江、柴進、戴宗を迎えて来た。

席は、李師々の部屋か、すばらしい一亭である。楽器の供え、芙蓉の帳、そして化粧室の華美など、いうばかりもない色めかしさだが、しかし酒は出さない。茶を煮て、金襴手の茶碗に、それもほんの少し注いで、彼女の手で各※(二の字点、1-2-22)の前に、すすめられたのみだった。

「おおこれは四川の名茶。田舎者の私たちには、めったにいただけない玉茶だ。