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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

申し難いが、銀子十両を、草鞋銭にさしあげる。身の振り方は、ほかへ行って考えてくれないか」

林冲は、憤然として、断わった。

「せっかくだが、物乞いに来たわけではない。では柴旦那の手紙を返してくれ。引き退がろう」

すると、宋万と杜選の両名は、あわてて彼を引き止め、また一方の王倫を説き始めた。

「頭目。その扱いは、ちとどうかと思うぞ。第一には、柴の大旦那の顔をつぶすし、第二には、梁山泊の人間は、義を知らぬ忘恩の徒だといわれるだろう。おれたちの仲間は、恩と義でもっている世界だ。それでいいのか」

「でも、山寨の仲間には、めったな者は加盟させられない。万一という惧れもある」

「それは口実にすぎまい。疑わしく思うなら、仲間の誓約を立てさせればよかろう」

「誓約。ふウむ……じゃあ、やらせてみようか。おい林冲とやら、誓文なんざ、書けとはいわんよ。その代りに、この王倫の命じることを、三日のうちに、きっとやってみせられるか」

「ここへ置いてくださるなら、いかなることでも」

「よし。じゃあ、もいちど梁山泊を出て、対岸の山東街道に潜み、三日以内に、人間の首を一つ取ってきて、これへ見せてもらおうか。