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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

見ると二十五、六歳の遊び人態の男が、刑吏に引きすえられ、一イ二ウ三イ……と数を読む青竹の下に、ビシビシ撲りつけられている。

「やあ、あれは高毬じゃないか」

「おお、ちげえねえ、高毬だ。かわいそうに、高も、とうとう年貢の納めどきに会いやがったぜ」

まだうら若い追放者だが、彼を知らぬ者はないらしい。

無職である。だが、この東京には、親代々からいた旧商家の息子で、姓を高、名を二郎という道楽者。――親に似て、家産は失っても、糸竹の道に長じ、歌えば美声だし、書道、槍術、棒、騎馬、雑芸、何でも器用だった。わけて“賭け蹴毬”は名人といわれている。

表向き、狭斜の巷で、幇間(たいこもち)めかした業をやっていたが、喧嘩出入りが好きで、一面、男だて肌な風もある。もちろん、悪事の数々もやって来たろう。その積悪がバレた末、ついに今日のお仕置きの破目となったにちがいない。

――で、さっきから、青竹を振ッて、

「八十っ、八十一っ。……九十っ、百ッ」

と、高の背なかへ、一打ちごとに、数を叫んでいた獄卒が、百をさいごに、ほっと身を退きかけると、

「こらっ、待て。まだ百打は打ッていないぞ。