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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

叩けば何か出るだろう。なにしろ、紅葉の葉ッ端じゃ土産にもならねえからな」

呟くやいな、雷横は、そこの卓を蹴って、男のからだもろとも、引っくりかえし、

「縄をかけろ。四の五をいわすなッ」

と、不意にその男を搦め捕らせた。

もちろん、赤痣の若者も、吠えたり暴れたり、抵抗はしたが、二十余人の捕手に会ってはどうしようもない。手負い猪のように東渓山の麓へと曳きずられていった。

そもそも、この山裾には、一すじの渓川を境として、西渓村と東渓村との、二聚落がある。

かつて、その西渓村のほうでは、白昼でも妖怪が出るという噂がたち、事実、そこの淵で理由なく村の男女が溺れたり、牛馬が引き込まれたり、怪異な変が多かった。

すると或る年。一人の旅僧が、

「わしが鬼魂を鎮めて、供養してあげる」

と、大きな青盤石に経を刻ませ、妖怪退散の法要を行なって去った。

それからというもの、西渓村には無事がつづいた。――西渓村の幽鬼はみな、東渓村へ逃げていったのだ――と言い囃された。

怒ったのは、東渓村の名主、晁蓋である。

「化けものなんざ、いくらでもこいだが、おれが名主でいる以上、そんなケチをつけられちゃあ黙ってはいられねえ。