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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
西渓村の奴らめ、明日の朝になって、腰を抜かすな」
晁蓋は、深夜、ひとりで渓川を渡って行き、西岸の供養塔を担いで帰った。そして東渓村の見晴らしのいいところへ、それをでんと据えこんで、澄ましていた。
以来、この庄屋さんに、あだ名がついた。
――托塔天王。
その名のほうが、有名になった。
「おいっ、誰か起きてみねえのか。さっきから表門を、どんどん叩いている奴がいるじゃあねえか。どいつもこいつも寝坊だな」
晁蓋はさっきからどなっていたが、ついには自身寝室を出て、表門へ出ていった。
その朝。いや、夜はまだ明けてもいなかった頃である。
「うるせえな。だれだい、今頃」
開けてみると、黒々とたいへんな人影だ。松明の火光の中には、大の男の縄付が見えるし、顔見知りの雷横もいる。
「やあ、どなたかと思ったら、県の与力さまじゃあございませんか。いったい、どうなすったんで」
「おう晁蓋。こんな大勢して甚だすまんが、部下の者に朝飯をとらせたい。暫時、屋敷のすみを貸してくれんか」
「おやすいこッてすが、何か大きな捕物でも」
「なあに、そんな仰山な獲物でもねえが、霊官廟の内に、うさんな野郎が寝込んでいたので、引ッ縛ってきた帰り途だ。