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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

あそこも村の内、おぬしに声をかけないのも悪いからな」

「それは、どうも……ま、ずっとお通ンなすってください。いま雇人どもを起して、さっそく朝飯の支度でもさせますから」

まもなく荘院の内は、大賑わいになった。県のお役人衆とあって、下へもおかず、酒飯はもちろん、風呂まで沸かす騒ぎだった。

そのすきまに晁蓋は、門長屋の暗い一戸を覗いてみた。庄屋として、縄付の男を一見しておく義務を感じたからであろう。

見ると、鳶色の体に無数な傷を負った若者が、両手を梁に吊り上げられたまま、爪先だちに立っていた。大火傷でもした痕か、赤痣いちめんな顔を歪め、苦痛を歯がみで耐えている。

「はて。村じゃ見たことのねえ男だな。おい、どこのもンだ、おめえは」

「遠方から来た者です、へい、この地方に、お訪ねしたいお人があったのに。……そ、それを理不尽にも、いきなり縄目にかけやがッて。……あ痛て、アててて」

「なんだい。いい若いもンがよ。して、訪ねるお人ってえのは?」

「東渓村の托塔天王だ」

「えっ、なんの用で」

「そいつア言えねえ。だが晁蓋さんは、村名主だとか。……旦那、この村は何村ですえ」

「東渓村だよ。