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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ひとつ、これを持って、てまえの極くお親しくしている学士さまの所へ行ってみませんか」
「いやありがとう。職につけるものなら、ぜいたくは申しませんよ」
高は、小蘇学士の門をたたいた。
だが、この学究は、ちょっと、眉をひそめた。学者暮らしは楽でない。わけて、話しこんでみると、自分とは肌合いの違う人間でもある。――といって、義理のある董の依頼では、断りもならず、といった顔つきで、
「むむ。まあ今夜は、邸へお泊んなさい。そして何だな、明日、わしが紹介して進ぜるから、王晋卿さまのお館へでも一つ伺ってみるんだな。先ごろ、ご近習の気のきいたのが一人欲しいようなことを仰っしゃっていたから、御辺の運がよければ、多分、採用になると思うがね」
すこぶる頼りない口吻だが、ともかく、次の日、高はその王晋卿を訪ねてみた。だが、その華麗な館門の前に立つと、さしも横着者の彼も、二の足をふんでしまった。
ここは宮家である。現天子の婿君で「王大将ノ宮」と、世間でいっているのが、すなわち当の晋卿らしい。
「はて、どうしよう。小蘇学士め、ていよく俺を追っ払うため、寄りつけもしないこんな王家へなど、紹介したのかもしれねえぞ。