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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

これらはまだ未知数というしかない。今は、五月初め。誕生祝いは七月十五日とか。――なお七、八十日の間は、たっぷりある。

「準備に日は欠かぬ。だが、三兄弟の誘いこみは、早いに限る」

呉用は、酒もほどほどに、さっそく旅支度にかかりだす。外は、ぬるい夜靄の夜だし、陽気にはまず申し分もない。

「じゃあ、わざとお見送りもしませんが」

「むむ、人目は避けよう。劉唐さんも、わしの帰るまでは、おとなしく客間に籠っていてもらいたいな」

「もうご心配はかけません。吉左右をお待ちしております」

門を立って行く呉学人の影は、すぐ模糊たる夜靄のうちに淡れ去った。

一日おいて。翌々日の午じぶん。

早くも彼の姿は、水郷石碣村のほとりに見られた。

かつて、何度も遊んだ土地だ。阮小二の家も、探すまでのことはない。芦汀に臨み、山に倚り、数隻の小舟をもやった棒杭から、茅屋の垣にかけて、一張りの破れ網が干してあった。

「おいでですか、どなたか」

廂を、覗くと、昼寝でもしていたか。

「だれだね」

むっくり出てきた若者がある。

これが阮小二だった。腰切りの漁衣、はだけた胸。その大胸毛は珍しくないが、石盤のような一枚肋骨は、四川の絶壁を思わすに充分である。