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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ふウむ……こいつは一本参ッたかな。しかし、どういう仔細か、そこを聞こうじゃないか」

「入江や海なら、どんなところにも、どんな魚でもいると思うのが、そもそも世間知らずでサ。――打ち明けて申しますと」

「なんだか、ひどく物々しいのう」

「まったく、物々しいお話ですがね、あっしどもの漁場としているこの石碣湖なンてえのは、猫のひたえみたいなもンで、一尾十斤もする大鯉を揚げるにゃあ、どうしても向うに見える梁山泊の辺まで漕ぎださなくちゃ採れません」

「それ、そこがおかしいじゃないか。梁山泊なら水つづき、しかも彼方に見えている。どうして、そこで採ってこられんのか」

「鬼門ですよ。梁山泊ときては」

「鬼門。いよいよ変だな。どういうわけで」

「イヤ、お話にも何もなりゃあしません」

「まさか、殺生禁制の禁漁区でもなかろうに」

「殺生禁断どころか、ヘタに近よれば、こちとら、人間さまのお命があぶねえんですよ。――ずっと以前は、梁山泊の沖こそ、あっしども兄弟の稼ぎ場でしたのに、イヤひでえことになったもんで、お蔭ですっかり貧乏つづきのこの落ち目、忌々しいが、どうにも仕方がありやしません。なあ弟」