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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「そりゃ見てはおれまい。幸い、わしの住んでいる土地には、晁蓋というなかなか肯かない荘院がおる。そのせいか、それほどでもないが」
「だから奴らには、金力か腕か、どッちかでなけりゃあ応対もできません。弱い土地の、素直な土民と見るほど、権柄を振り廻すのが、いまの役人ですからね」
「貧土こそわが世の春といったような振舞だな。これや何とかせずばなるまいて」
「そうですよ、先生。なにもさもしい根性で、役人暮らしの垣の内を覗くわけじゃあねえが、大ゲサに言やあ、金銀は秤で分け取り、衣裳は好み放題、食い物は贅沢ざんまい。それがみンな、人を泣かせてせしめているものだから、業腹でたまりません。こちとらなど、働いても働いても、どうしてあいつらの真似もできねえのかしらと、稀にゃあ、情けない気もしてきますぜ」
「なんだ、漢たるものが!」――と呉用智多星は、ここぞと、語気を入れて、叱るように、兄弟の顔を、らんと睨め廻した。
「あんた方は今、いう口も穢れるように、腐れ役人を嘲ったじゃないか。その口ですぐ、役人暮らしの真似もできぬとは、なんたる意気地のない愚痴か、みッともないぞ、いい漢が」