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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
晁蓋はやっと、腰を上げた。
「先生、お客人にも、失礼ですが、ちょっと中座させていただきます」
彼が門前へ出ていってみると、なるほど、荘丁大勢、ただ遠巻きにだけして、恐れおののいている様子だ。中には、手脚を傷められて凄愴な面をしている連中も少なくない。
「どこにいるんだ、そいつは」
「ほれ、そこの槐の木の下に、悠々と、憎ていな笑い顔して、腰かけておりますよ」
「あ、あれか」
晁蓋は、つかつかと、彼の前へ歩いていった。
彼のほうでも、晁蓋を見るや、すっくと同時に起ち上がっている。
山行者の着る裾みじかな白衣に、垢じみた丸グケの帯。笈は負わず、笈の代りに古銅づくりの一剣を負っている。八ツ乳の麻鞋は、これも約束の行者穿きのもの。さてまた、年ごろはといえば四十を出まい。黍色の容貌に、腮だけの羊髯をバサとそよがせ、口大きく、眉は少し八の字、どこか愛嬌さえある顔だが、身の丈ときたら一幹の松のごとく、すッくと見え、さらに憎ていなのは、手に鼈甲紙の団扇などを持って、ふところに風を入れていたことだった。
「道士、えらいごけんまくだな」
「騒いでいるのは、こッちではない。勝手にここの雇人どもが、自分で瘤をこしらえておるまでのこと」