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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「なにをいってらッしゃるの。蝉なんか、二十日も前から啼いていますわ。いったい、東京へ送り出す父の誕生祝いの品々は、荷拵えばかりなすっておいて、どうなさるおつもり?」

「もちろん、万全を期して、七月十五日までに着くよう、輸送せねばならん。……だがね、誰を輸送使として遣すか、その宰領の人選に、頭を悩ましておるんじゃよ」

「それには、お心あたりがあるなんて、いつか仰っしゃっていたではございませんか。そのお胸の人間ではいけないんですか」

「いけないか、適任か、使ってみなければわからんさ」

「使ってみての上なら、誰にだってわかることじゃありませんか。ばかばかしい」

「おいおい、そう頭ごなしに、大声でいうなよ。中門の外には、衛兵が立っておるんじゃ。聞えたらこの梁中書、まるで赤面ものじゃないか」

「そうそう。兵隊で思い出しましたわ。兵隊上がりの提轄、青面獣楊志とやらでは、いかがなんですの」

「その楊志なら、武芸十八般、腕なら北京軍十万の中でも、屈指の者だが、いかんせん、ここへ来てからの日も浅い、第一心情いかんという点が、まだ充分には信用しかねる。……それで大いに迷っておるのさ」