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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
だがネ、兄貴も悪い弟を持ったもんで、ときどき、風邪も引きたくなるだろうな」
「まあ、へんだよ今夜の清さんは。なんでそんな嫌味をいうのさ」
「イヤしみじみと、時にゃア懺悔がしたくなるのさ。こうして、姉さんの、心ならずものお酌なんかしていただくと、なおさらのことだ」
「もう、してやらないからいい! 変に絡んでばかりきてさ。――今日もお役署には、蔡大臣のお目付とかが来て、十日以内に挙げなければ、お奉行も馘、うちの良人も遠島だなんて、顔に金印(いれずみ)まで打たれて帰ってきたんだよ。お酒はいいが、悪ふざけは、やめてくださいよ」
「へえ、そいつあ初耳だな。そんなことなら、もちッと早く来れやよかったが、またやくざな弟めが、いつものでんで、銭でもセビリにきやがったかと思われるのも辛いと思って、つい閾を高くしていたが」
「ちょっと待ってよ。清さん、いまいったのは、何のこと?」
「なあに。こんなやくざな弟野郎でも、ひょんなことから、ひょんな役にも立つもんだということさ」
「じれッたいねえ、清さんてば。……もしやおまえ、黄泥岡の一件のことで、なにか、心当りでも持ってるんじゃないの」