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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

というなア、七人のうちでも、どうやら頭だった無口な男に、見覚えがあったんでさ。ちょっと思い出せなかったが、寝てからよくよく考えてみると、もう数年も前に、やくざ仲間の者に連れられて、頼って行った先がある。――なんと、その時ちらと見た、そこの主人にちげえねえ。城県は東渓村の大名主、たしか晁蓋という男でさあね」

「ふウむ、そして」

「はてな。夕方、なんと宿帳につけたかしらと、翌朝、念入りに調べてみると、七人みんなが、どれも李姓だ。李春、李長、李達、李周といったあんばいに。……それで国もとも濠州の同村、行く先は東京、商売は棗売り。つまり東京へ売り捌きに行くとある。……おかしいなあ、名主が交じって、とは思ったが、その朝はまア、ご機嫌ようと見送ったのさ。そして一日たった次の日だ、やくざの仲間が誘いにきて、行かねえかッてんで、ふところは淋しいが、村のばくち場を覗きにいき、夜になったら、取られたやつと二人で、ぼんやり帰ってくると、村の三ツ叉道を、妙な野郎が、二つの空桶を担いで素っ飛んできやがった」

「なるほど」

「連れの男が、オヤ今のは白日鼠の白勝らしい。おういっ白兄哥って、呼んだけれど、返事もしなけりゃあ、振返りもせず消えちまった。