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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
てまえは、むかしお世話になった縁故から、酒売りの一ト役を頼まれて、筋書どおりに、働いたまででございます。ほかのことも、ほかの六人の衆も、いったい誰と誰なのやら、いっこうに存じませんので」
「よしっ、それだけで充分だ、あとの六人なざ、芋蔓でしょッ曳ける」
何濤は、奉行の手から一札の公文を授けられた。管轄ちがいの他県へ出るので、役署と役署の交渉が要る。
といって、そんな手つづきに手間どって、こっちの手配が漏れたら取り返しはつかぬ。――この間、何濤の苦心たるや容易ではなかろう。それに、なお、犯人の面通し(容貌の鑑定)のためには、さきに生辰綱輸送の行に加わり、その後、証人として奉行所に居残っていた強力の兵三名を現地へ同伴して行くなどの用意もあった。
「まずは、おれ一人で、城県へ急ぎ、県の役署と万端を打合せておく。大勢の捕手組その他は、面通しの者を帯同して、後からこい」
何濤は、部下にこう言い残して、その夜半にはもう単身で、馬を県外に飛ばしていた。
耳の飾りは義と仁の珠。宋江、
友の危機に馬を東渓村へとばす事
どこの役署前も似たような風景だが、ここの城県城の大通りにも、代書屋、弁当屋、腰かけ茶屋などが、町に軒先を並べていた。