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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
まぎれもない官軍といってよい。――つね日ごろの捕物とはわけが違う。堂々官軍の威をかざして行けい」
まさにこれは、済州奉行所始まって以来の椿事。こんな大捕物陣が繰り出された例は近来ない。
かかる数日の間に。
石碣村の葭芦しげき一漁家のうちでも、怪しい動きが、夜を日についで行なわれていた。
あだ名、立地太歳ノ阮小二、短命二郎ノ阮小五、活閻羅ノ阮小七などの兄弟三名は、とつぜんこの水郷のせまい漁小屋に、晁蓋、呉用、劉唐、公孫勝らの四名を迎えたので、即日、
「ここでは」
と、世帯道具のがらくた物を一ト舟に乗せ、またお手のものの櫓櫂をもって、さっそく家を、そこからさらに遠い湖上の洲の一軒家へ移してしまった。
「さあ、皆さん」と、阮小五が、その晩、酒の支度をすると、小二、小七も手料理にかかって、
「今夜あ一つ、引っ越し酒といきましょうや。小二の婢とおふくろは、金を持たせて、これも遠くへ隠してしまいましたから、こち徒はもう、足手纒いも何もありません」
「それにね、先生」と、小七は呉学人へ向って「――いくら躍起な捕方でも、ここの湖上までは、おいそれとはやってこられませんからね。