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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
みんな笑った。「――なるほど、聞きしにまさるッてえなあ、このことだろうな。そう聞いちゃあ、追手に追われる身でなくても、一度は渡ってみたくなりそうだ」
湖上の宵、どこに憚る灯一つもない。ようやく酒もまわり、歓語も沸いてきたころである。日ごろ、三兄弟が眼をかけていた一人の漁師が、早舟でここへ告げてきた。
「えらいこッてすぜ、皆さん。五、六百人の官軍が、もう村ぢかくまで来たッていうんで、村じゃあ大変な騒ぎですよ」
「そうかい」――兄弟はすまして言った。
「よく知らせてくれたな。まア一杯飲んでゆきなよ」
呆れたように、男はすぐ消えてしまった。一瞬の沈黙はあったが、七人の世間話はすぐ元通りに返っていた。
「案外、早くおいでなすッたな。官軍というからには、ちったあ支度して来たろうに」
「小二兄哥。来たからにゃあ、弱音は吹くめえぜ」
「あたりまえだ。陸とは違う。こっちは河童だ。どいつもこいつも抱き込んで、水の底を、たっぷり見物させてやるさ」
「残ったやつらは、この小七、小五が、銛のさきで串刺しか」
すると、公孫勝が、からかい半分、杯片手にわざと取澄まして言った。
「いや兄弟衆、意気はおさかんだが、五百人の数ですぞ。