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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ええい、程にしやがれ、まごつくのも」
何濤は部下を罵ッた。
「てめえたちは、日ごろ陸の上だと、目から鼻へ抜けるような奉行付きの人間どもじゃねえか。いくら水の上だって、このざまア何だ。――少し退がって、横の沼へ出ろ、沼の方へ」
それからすぐ、十人二十人ずつを、手分けして、
「広くもねえ浮巣の島だ。葭の根を分けても程が知れている。奴らの隠れ家を見つけて来い。いや見つけたらすぐ合図をしろ」
と、陸へ放った。
ところが、その幾組もが、いつまで待っても一ト組とて帰って来ない。やがて陽は傾き、蕭条たる水も芦も茜いろに染まっていた。
「やい、この小舟に、五、六人乗り込んで俺について来い。おれ自身、廻って視よう」
赤い沼のおもてを、彼の早舟は影黒く、岸から岸を二、三十町ほども漕ぎ巡っていた。――と鋤をかついだ百姓の影が岸にみえた。何濤はそれへ呼びかけて、
「ここは何処だい。お百姓」
「旦那は何だね」
「見た通りだ。官のお役人よ」
「こんなところに、なんの御用かえ、ここは断頭溝ッてえ、沼の袋小路でがすぜ」
「阮の兄弟の漁小屋があるだろうが」
「あ。そんなら、すぐそこの林の蔭ですわえ」