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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そのうえ彼らの逃げまどう先々もまた、いたるところ、野火の焔と化している。
暁もまたず、大小の捕盗船はことごとく覆没し、あわれむべし、この夜助かった捕兵といったら、そも、幾人あったろう。――やがて夜は白み、水のおもての狭霧には、まだ黄いろい余煙が低く這い、異様な鳥声が、今朝は劈くように啼き響く。
「どうだ何濤。ちったあ懲りたか」
「さあ、こんどは、てめえの番だぞ」
「首の座となってから、泥亀みてえに手を合せたって追いつくもんか。きれいに往生しやあがれ」
阮の三兄弟は、ゆうべの小舟の舟底から、簀巻の何濤を引っぱり出して、岸の上にひきすえていた。
やや離れたところに腰かけて、ニヤニヤ笑って見ているのは、公孫勝と晁蓋だった。――晁蓋はほとんど蔭の指揮だけをして、ゆうべの修羅場には腰の一刀も抜いてはいない。
「おい、三兄弟――」と、その晁蓋は、頃あいをみて言いだした。
「やっちまう気か。よせよせ。そんな奴、斬ッたところで、何になるものか。それよりは、押ッ放してやれよ」
「えっ、助けてやれと仰っしゃるんですか。そんなお慈悲は、済州の百姓町人にとっちゃ、かえって恨まれもんですぜ」