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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「喝ッ。き、きさまたち……この王倫が、こんなに侮辱されているのを見ているのか。やあ。わしの味方はどこにいるんだ。ほかの手下ども、林冲を捕り抑えろ、ぶッた斬ってくれねばならん」

と、吠え猛った。すると彼のその鼻さきへ、

「おおもッともだ。さあ、斬っておやんなさい」

と、呉用が手を退いて、林冲のからだを、突き放してやったのだった。

王倫は、佩剣へ手をかけた。しかし抜けない。いやそれよりもはやく、豹子頭のその青額が、低くどんと、彼の心窩の辺へぶつかって来た。同時に、その脾腹へ深く刺しこんでいた彼の手の短刀が、しずかに王倫の立ち往生のままな苦悶を抉っていた。……ポト。ポト。ポトと音せわしく糸をひいて垂れた鮮血は、絨毯模様のような緋牡丹を床の足もとに大きく描いた。

「…………」

どたんと、林冲は、王倫の大きな図ウ体を、手から離した。晁蓋以下も、みな片手に白刃を隠し持っていたのである。呉用は、大音声で言った。

「言い分のある者はここへ出て来い。――今からは豹子頭林冲をわしたちの頭領として、山寨の主座にいただこうぞ。文句はないか」

朱貴、杜選、宋万らは、床にへたばッて、ただ叩頭するのみである。