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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

……このとおりだ、婆惜。男が頭を下げてたのむ」

「おもしろいわね。じゃあわたしのいうこと、なんでもきく?」

「きこう。きっときく」

「三つの条件があるわよ。いいこと」

「たとえ、何ヵ条の難題でも」

「いいわね、じゃあ第一に――わたしの妾証文をわたしに返すこと。そして張三のところへお嫁に行っても、一さい苦情のない一札を入れることよ」

「よろしい」

「第二には――ここの家財道具、わたしの髪かざりまで、すべて、わたしの物よ。みんな俺が買ってやった物だなンて、野暮なもんくをいわないことね」

「それも合点だ。して、あと一条は」

「それが、たいへん、難かしそうなの。あんたに、それが肯けるかしら」

「どんなことか、いってみろ」

「百両、ここへ並べて頂戴。……手切れ金に」

「いまはない」

「そら、出しおしんでるくせに、梁山泊の使いから、あんた、たしかに受け取ったでしょ」

「じつは、十両だけ取って、あとは返したのだ。九十金は、後から工面しよう」

「嘘ばッかり。さ、きれいに出しておしまいなさいよ。それがいやなら、こっちも鸞帯は返さないからいい。返すもんか。どうあっても」

「返せ。なんでわしが嘘をいおう。