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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

家財道具を売り払っても、きっと数日中に持ってくる」

「じゃあ、その時の引き換えよ。なんでも現金取引きに限るわ。それとも、わたしを泥棒だといって、お白洲へ突き出しますかね。わたしは、どっちでもいいの」

「なんといっても」

「くどいわねえ。この人」

「……な、婆惜」と、宋江は起って、我れを憐れむ涙につい眼を曇らせながら――「きっと、金は後から揃えて来る。な……気を直して、あれを返してくれ。おまえの気にさわったことがあるなら、わしが悪かった。あやまるよ……。婆惜」

彼女の硬ばった肩ごしに、その顔を覗き込み、必死に機嫌をとると、よけい宋江の弱味に誇った女は、その顔を、うるさげに突きのけて、

「いやよ、いやよ! わたしは、あんたのその口の臭いを嗅いでもムカつくのよ。百両出すのが惜しければ、貰いたくもないわ。――その代り、晴れてお上からご褒美を頂戴するわ。百両の半ぶんでも、お上からなら大威張りだし……さ」

「うぬっ」

今はとばかり、宋江の眼じりが裂けて見えた。とたんに、蒲団の下の白裸が双肩にかかった男の力で引っくりかえされ、乳ぶさの下から、鸞帯の錦、翡翠の玉が、チラと見えた。