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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
自分で自分がもどかしい。彼女は泣きたくなった。体の中で狂う性の翼に気が狂いそうだった。
「二郎さん! 飲ませずにはおかないわよ。お嫌いなの、私のお酌が……。あっ、こぼれる」
「嫂さんどうかしてますね、今日は」
「わかること、それが。……私の眼を見てよ、眼を」
「あっ、無茶だ、嫂さんがそんなに飲んじゃいけねえよ」
「じゃあ、助けてちょうだい。……うれしい、飲んでくれたわね。もひとつよ。嫌アん……それを空けてからよ」
そして彼女は椅子ごと寄って、素早く武松の膝へ姿態だれかかった。と、もう白い手は武松の厚い肩を半ぶん捲いて、髪の香もねッとりと、男の胸を掻きみだすばかり甘えかかる。まるで魔女の身ごなしだ。朱い唇が罌粟の花さながらに仰向いて何か喘ぐ。……どうかしてよ! どうかしてよ! 彼女自身すら持て余しているものを身もだえに揺すぶるのだった。
「あ。……ど、どうしたのさ嫂さん。くるしいのかい」
「くるしいわよ、わかんないこと? ……抱いて、抱いてってば」
「こうですかい」
「もっと、ぎゅっと。いっそ絞め殺してよ」
「じゃあ、こうして貰いたいんだね」
武松は抱いたまま突ッ立ちあがった。