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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

でんと、投げとばされていたのである。

「ち、ちくしょうッ」

起とうとするや、また投げとばされ、すでに手裡になかった棒は、王進の手に移っていた。そして、その棒の先に、九ツの龍の肌は、まるで竹箒に弄ばれる蜘蛛のように、離されては伏せられ、逃げかけては絡みつけられ、果ては、死に絶えたかのごとく、へたばってしまった。

「どなたか、ご子息へ、水を持って来てあげてください」

言いながら、王進は、史進のそばへ寄って、その体を膝に抱えた。そして親の太公を振り仰ぎながら、気のどくそうな顔をした。

「……どうも、ちと図にのッて、お懲らしが過ぎましたなあ。しかし、どこもお怪我はしておりませんから、ご安心を」

「いやなんの。伜めには、よい薬でしたわい」

そうはいうものの、やはり親心か。太公は、われ知らず、額に滲ませていた冷たい汗を、道服の袖でそっと拭いた。そして、

「お客人。あらためて、とくとお話し申したいことがおざる。茶なと煮て、わしの房でお待ちしておりますぞ。おそれいるが、伜めを連れて、あとよりお越しくださらぬか」

と、杖を曳いて、画中の人のように、彼方の書楼へ向って立ち去った。