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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

王婆は彼女に手をかして、半死半生の武大の手を取り足をとり、隣の金蓮の家の二階へ運び上げた。武大は苦しげに、何か黄いろい物を口から吐き、夜どおし囈言を口走っていた。

まずは、武大もそんな程度と聞くと、西門慶は大胆にも、たった二日ほど措いただけで、またぞろ隣家へ来ては金蓮に呼びをかける。金蓮もまた、世帯臭いものを消して、娼婦のごとく隣へ辷りこんで行く。――あとの暗い北窓には枕をつけたままの武大が、口の渇きにも、白湯一つままにはならず、身を起そうにも、肋骨が痛んで身動きもできない有様。そして、ようやく近所の灯とともに金蓮が帰って来れば、あきらかに淫らな紅や白粉の疲れを見せているのだった。武大はいくたびとなく、歯がみして「畜生、畜生」と男泣きの涙にただれた。時には、悶絶して、黒い唇を噛みふるわせ、

「……見てろ。いまに見てやがれ。おらあ死んでも、いまに旅の弟が帰って来るから。ああ息のあるうち、武二郎(武松)よ、帰って来てくれ。このかたきをとってくれ……」

力なく、暗い天井へ向って、独り叫んでやまない時などある。

金蓮から、これを聞くと、西門慶も色をなして、